おいしいワインを買ったものの、飲むタイミングや開封後の飲みきる期間に迷う人が多くいます。ワインは保存方法や開ける時期によって、味わいが変わる繊細な飲み物です。

- 夫婦ともに日本ソムリエ協会認定の現役ソムリエ
- 仕事以外でも年間100本のワインを飲む愛好家
- 独自に評価基準を設定し、プロ目線で評価
- 男女それぞれの視点からもワインをレビュー
この記事では、ワインの賞味期限や保管方法について解説します。記事を読めば、ワインの種類ごとの飲み頃や開封後の保管方法、賞味期限を伸ばすコツがわかります。正しい知識を身に付けて、ワインを長く楽しみましょう。
» ワインを楽しむなら知っておきたい!ワインの基礎知識を理解しよう



ワインのプロが、初心者の人にもわかりやすく解説します。
ワインに賞味期限が表示されていない理由


ワインに賞味期限が表示されていない理由は複数あります。ワインは一般的な食品と違い、時間が経つほど熟成し風味や香りが変化します。一概に、味が落ちる時期を決められません。適切に保管された未開封のワインは、理論上、何年でも保存が可能です。
ワインの最適な飲み頃は、種類や品質によって異なります。高級赤ワインは10年以上の熟成で価値が増す一方、スパークリングワインは未開封でも数年以内が推奨されます。気温や紫外線により品質が変化するため、一律の賞味期限は設定できません。開封後は保存方法で劣化速度が変わり、飲み頃は個人の好みで決まります。
未開封のワインの飲み頃


ワインを最高の状態で楽しむには、種類に応じた適切な時期に飲むのが大切です。種類ごとのワインの飲み頃と、おいしく長持ちさせる方法を紹介します。
赤ワイン
赤ワインは、適切な条件下であれば長期保存が可能です。若いワインは約1〜5年程で飲み頃を迎え、フルボディの赤ワインは10〜20年以上長持ちする場合もあります。保存する際は、以下の点に注意しましょう。
- 温度:10〜15℃
- 湿度:60〜70%
- 光:直射日光や蛍光灯を避け暗所で保管
ボトルを新聞紙で包むと光を遮れます。極端な温度変化や常温保存は避けましょう。おすすめは冷蔵庫の野菜室です。強い匂いの食品から離して保管してください。



一般的な野菜室の温度は3~9℃、湿度20~50%です。



ワインセラーなら温度も湿度も理想的な環境に調整できます。長期保存させるなら、野菜室よりワインセラーが最適です。
白ワイン
白ワインは赤ワインよりも早めに飲むのがおすすめです。一般的な白ワインは、製造から1〜2年で飲み頃を迎えます。一方フルボディの白ワインは、5〜7年程度が飲み頃です。
品種によっても熟成期間が異なります。シャルドネやリースリングは熟成に向く品種として知られており、時間とともに複雑な風味が増します。甘口の白ワインは比較的長期保存が可能です。
保存方法は赤ワインと同じく、10〜15℃の温度で湿度60〜70%が最適です。光を避けた暗所か冷蔵庫の野菜室で保管しましょう。フレッシュさや爽やかさが特徴の白ワインは、なるべく早めに飲むのをおすすめします。



糖度が高い甘口ワインは、一般的なワインより長期熟成しやすいです。



代表的な甘口ワインである貴腐ワインは、100年以上の熟成も可能と言われています。
スパークリングワイン


スパークリングワインは、炭酸ガスが封入された発泡性のワインです。ノンヴィンテージは1〜2年、ヴィンテージは3〜5年が飲み頃の目安です。保存環境は12〜15℃の低温で、65〜80%の湿度を保ちましょう。セラーがなければ冷蔵庫の野菜室での保存がおすすめで、ボトルを寝かせるとコルクの乾燥を防げます。
条件をきちんと守れば、ワインの品質を1〜2年程度保てます。一般的なスパークリングワインは長期熟成向きではないため、未開封でもできるだけ早めに飲みましょう。
ボジョレーヌーボー
ボジョレーヌーボーは、毎年11月の第3木曜日に解禁される若いワインです。フランスのボジョレー地方で生産され、ガメイ種のぶどうを使用しています。早く飲むのを想定したワインのため、長期保存には向いていません。解禁日から年内に飲むのが最適で、遅くとも翌年5月頃までが飲み頃とされています。
適切な温度は10〜15℃です。涼しい場所が最適で、冬場は暖房で温めすぎないよう気をつけます。直射日光を避け暗所で保存し、ボトルを新聞紙や包装紙で包むのがおすすめです。おいしさを味わえるよう、なるべく早めに飲みましょう。



ボジョレーヌーボーは、その年のブドウの収穫を祝いブドウの出来をチェックするためにも飲まれるお祝いの新酒ワインです。



「ヌーヴォー」とはフランス語で「新しい」を意味する言葉。ボジョレー以外にも、ヌーヴォーはフランス各地で造られているんです。
開封後のワインの賞味期限


開封後のワインの賞味期限は、種類ごとに異なります。温度管理や空気との接触を抑えれば、高品質での保存が可能です。開封後はなるべく早く飲みきりましょう。以下のワインの賞味期限と、開封後の保管方法を解説します。
- 赤ワイン
- 白ワイン
- スパークリングワイン
- ボジョレーヌーボー
赤ワイン
長期保存が可能な赤ワインでも、開封後の賞味期限は短くなります。賞味期限の目安は以下のとおりです。
- ライトボディ:約3日程度
- フルボディ:約5日程度
飲みきれない場合は、2〜5℃の冷蔵庫で保管し、空気との接触を最小限に抑えます。光による品質低下を防ぐため、新聞紙でボトルを包みましょう。
開封後の保存には、ワインキーパーやバキュバンなど専用の道具があると便利です。渋みが強いワインほど長持ちする傾向ですが、ワインの種類や保存状態によって異なります。風味を維持するためにも、3〜5日程度で飲みきるのが理想です。
白ワイン
開封後の白ワインは、タイプによって賞味期限が異なります。適切に保存した場合の目安は以下のとおりです。
- 辛口タイプ:2〜3日程度
- 甘口タイプ:1週間程度
- 極甘口タイプ:1か月程度
一般的に、甘いワインほど賞味期限が長くなる傾向があります。保管時は13〜15℃が最適です。コルクを利用する際は、ワインに接していなかった部分を下にして栓をしましょう。コルクにラップを巻いて栓をすると清潔に保てます。おいしく飲むためにも、できるだけ早めに飲みきるのがおすすめです。
スパークリングワイン


スパークリングワインは、できるだけ当日か遅くとも翌日に飲みきりましょう。開栓と同時に一気に空気が入り、炭酸ガスが急速に抜け、泡が失われるためです。
炭酸抜けを防ぐため、冷蔵庫保存がおすすめです。あればスパークリングストッパーを使用し、ない場合はラップと輪ゴムで代用します。ボトルの口をラップで包み輪ゴムできつく巻きましょう。ガスを抜けにくくするため、ボトルは縦置きで保存します。
高級なスパークリングワインは、炭酸が抜けても白ワインやカクテルとしても楽しめます。本来の炭酸と風味を楽しむには、1〜2日以内が保存の目安です。できるだけ早めに飲んでください。
ボジョレーヌーボー
ボジョレーヌーボーは、開封後1週間以内に飲むのが推奨されているワインです。可能であれば2〜3日以内に飲みきりましょう。保存方法は以下のとおりです。
- 冷蔵庫で保管
- 瓶の口をしっかり閉じて酸化防止
- 直射日光を避け、冷暗所で保存
空気が入らないよう、小さな瓶への移し替えも効果的です。ワインストッパーを利用すれば、品質が保てます。ボジョレーヌーボーは新鮮さが命のワインのため、開封後はなるべく早く飲みきりましょう。
開封後のワインの賞味期限を伸ばす方法


開封後のワインは、空気が入って酸化が急激に進みます。酸化により風味や香りが変化し、品質の劣化につながります。以下の方法を組み合わせて賞味期限を延ばしましょう。
- 真空ポンプを利用する
- ストッパーを利用する
- ワインキャップを利用する
- ワインセラーを活用する
真空ポンプを利用する
真空ポンプは、開封後のワインの酸化を防ぐおすすめの道具です。ボトル内の空気を抜き、真空状態に近づけて酸化を抑えます。使用方法は以下のとおりです。
- ワインボトルの口にストッパーを差し込む
- ポンプを上下に動かして空気を抜く
真空ポンプにはコルク栓用とスクリューキャップ用があるため、ワインに合ったポンプを選びましょう。比較的安く手軽に利用できますが、完全な真空状態にはならないため、短時間での保存をおすすめします。
ボトルや本体は垂直に立て、ワインがポンプに流入しないようにします。頻繁な開け閉めは効果が薄れるため注意してください。スパークリングワインには不向きなため、使用を避けましょう。ワインの風味を損なわずに保存したい人におすすめです。



より真空性を高くするなら「コラヴァン」がおすすめです。高価ですが、コルクを抜かずにワインを注ぐことでワインの真空性を保てます。


ストッパーを利用する
ストッパーは、開封後のワインの口を密閉し酸化を防ぐ道具です。ゴム製やシリコン製があり、安価で手軽に使用できます。真空ポンプと組み合わせたポンプタイプや、ストッパーを外さずにワインを注げる注ぎ口タイプもおすすめです。
ストッパーを選ぶ際は、ボトルの口径に合ったタイプを選びましょう。ボトルは必ず立てて保存し、使用後は水洗いをして清潔に保ちます。高級ワインには密閉性の高いストッパーを選んでください。
ストッパーを利用すると、通常より5〜7日長持ちします。数日以内であれば一般的なストッパーで十分ですが、1週間以上保存するなら真空ポンプ付きをおすすめします。



真空ポンプ付きのストッパーなら、「バキュバン」がおすすめです。多くのレストランでも使用されています。
ワインキャップを利用する


ワインキャップは、開封後のワインを保存するための道具です。キャップを瓶の口に被せて隙間なく密閉し、ワインの酸化を防ぎます。柔軟なシリコン製のため、ボトルにフィットするのが特徴です。スクリューキャップのボトルやスパークリングワインには使用できないため注意しましょう。
繰り返し使用可能で、ボトルを寝かせてもワインがこぼれません。無臭のためワインの香りに影響を与えないのも大きなポイントです。さまざまな色やデザインがあり、識別しやすく、比較的安価で手に入ります。
ワインキャップは、開封後1〜2日程度の保管に効果的です。完全な密閉は難しいため、長期保存は推奨しません。使いやすさや機能性、品質保持能力を兼ね備えており、初心者にもおすすめです。
ワインセラーを活用する
ワインセラーの活用は、ワインの管理に最適です。季節に左右されず、適切な温度と湿度を維持し、高温や直射日光からワインを守ります。活用時は以下の点に注意しましょう。
- 温度:12〜14℃
- 湿度:70%前後
- 保管方法:横置き
ワインセラーがあれば、開封後のワインでも1週間程度楽しめますが、なるべく早めに飲みきりましょう。ワインセラーを選ぶ際は、収納本数や省エネ性能、メンテナンスのしやすさも考慮します。ワイン以外にも、日本酒やお米、野菜など他の飲食品の保存にも役立ちます。本格的にワインを楽しみたい人におすすめです。
開封後のワインを飲みきる工夫


開封後のワインを最後までおいしく楽しむ方法を紹介します。以下は、おすすめの活用方法です。
- 料理に利用する
- サングリアやホットワインにする
- ワイン塩やビネガーにする
料理に利用する
余ったワインを料理に使えば、風味豊かな隠し味として引き立ちます。ワインの種類ごとに、おすすめの料理をまとめました。
ワインの種類 | 料理名 |
赤ワイン | ボロネーゼソース・ビーフシチュー・スペアリブのワイン煮 |
白ワイン | 魚料理・スープ・クリームソース・フリカッセ |
共通 | ゼリー・コンポート |
おいしいワインを使った料理の味は格別です。フランベ(料理を炎であぶる)の際にワインを使用すると、見た目にも華やかな料理に仕上がります。
サングリアやホットワインにする


サングリアやホットワインは、開封後のワインをおいしく飲みきる方法です。さまざまなワインが使え、季節に合わせて楽しめます。
サングリアの作り方は、ワインに果物や砂糖、リキュールを加えて冷やすだけです。夏に最適で、パーティーでも人気があります。おすすめの果物はりんごやレモン、ベリー系です。好みのフルーツを入れ、酸味と甘みのバランスを意識しましょう。
一方、ホットワインは冬におすすめです。ワインにスパイスや果物、はちみつを加えて温めます。温めるとアルコールが軽く和らぎ、飲みやすくなるのが特徴です。シナモンやジンジャーを入れれば、血行促進につながり体を温める温活効果があります。
ワイン塩やビネガーにする
余ったワインをワイン塩やビネガーにして料理の幅を広げましょう。作り方も簡単で、特別な道具も必要ありません。ワイン塩の作り方は以下のとおりです。
- ワイン2:塩1の割合で調理する
- 鍋で煮詰めて水分を蒸発させる
- 乾燥させて保存容器に入れる
料理の隠し味やグリル肉、魚料理の仕上げに最適です。次にワインビネガーの作り方を以下に紹介します。
- ガラス瓶などの清潔な容器を用意する
- 容器にワインと酢酸菌を入れて軽く混ぜる
- 20〜30℃の温度で自然発酵させる
ワインビネガーは約2〜3週間で完成です。ドレッシングやマリネ、自家製ドリンクとして活用しましょう。
ワインの賞味期限に関するよくある質問


ワインの賞味期限や保管方法について、よくある質問と回答をまとめたので参考にしてください。
家庭でもできる保管のポイントは?
家庭でもできる保管のポイントを以下にまとめました。
- 温度は12〜18℃
- 湿度は60〜70%
- 直射日光の回避
- ワインボトルの横置き保管
- 振動や衝撃の少ない場所
おすすめはワインセラーですが、冷蔵庫の野菜室でも保管できます。ただし、匂いの強いものと一緒にしないでください。開封後はなるべく早く飲みきりましょう。
ブショネを見分ける方法は?
ブショネは、ワインのコルクが原因で発生するワインの劣化現象です。ブショネのワインを判断するには、以下の状態を確認しましょう。
- 湿った段ボールやカビのような匂いがする
- コルクが湿っていたり割れたりしている
- ワインの色に濁りがある
- 開封時の音や泡立ちに異変がある
- フルーティーな味わいが失われている
ワインに異常が見つかった場合は、ブショネの可能性が高いため飲用は避けてください。判断に迷う場合は、専門家や販売店への相談をおすすめします。



ブショネのワインは飲んでも問題ありません。ただ、おいしくはないです。



ブショネに当たる確率は5%程度と言われ、遭遇することは稀です。
まとめ


ワインには賞味期限がありません。時間が経つほど熟成し、風味豊かな味わいと香りを引き出すためです。しかし種類によって飲み頃があり、保存期間は異なります。未開封のワインは適切に管理すれば長期間保存できますが、開封後は早めに飲みきるのが基本です。真空ポンプやストッパーで賞味期限を延ばせます。
残ったワインは、料理やサングリアへの活用がおすすめです。家庭で保管する際は、室温や直射日光に気をつけましょう。ブショネの見分け方も押さえておくと安心です。知識を活かして、ワインを長く味わい尽くしましょう。