ワインを楽しむうえで、エチケットについての理解は重要です。この記事では、ワインのエチケットの基礎知識や読み方、選び方のポイントを詳しく解説します。記事を読めば、エチケットの情報を活用して、自分好みのワインを選べます。

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ワインのプロが、初心者の人にもわかりやすく解説します。
ワインを選ぶうえで重要な生産地や品種、味わいなどの情報が記載されているのが、エチケットです。情報を正しく読み取って、ワイン選びをより一層楽しみましょう。
ワインのエチケットの基礎知識


エチケットの基礎知識について、以下のポイントを解説します。
- エチケットの起源と歴史
- エチケットとラベルの違い
- エチケットが果たす役割
エチケットの起源と歴史
ワインのエチケットの歴史は古く、中世ヨーロッパの修道院でのワイン生産開始にさかのぼります。ワインの品質や、出自を識別する必要性が生じたのが、エチケットの起源です。16世紀頃から瓶詰めワインが普及し始めると、ワインの情報を記載する重要性が高まりました。
18世紀後半になると、近代的なエチケットが登場します。印刷技術の発展で、19世紀にはエチケットデザインが多様化し、ワインの個性や特徴の効果的な表現が可能になりました。20世紀に入ると、法規制によりエチケットの記載事項が標準化されました。
1935年にはフランスでAOC制度(※)が確立し、原産地表示が義務付けられています。1960年代以降、ニューワールドワインの台頭で、エチケットデザインはさらに革新的になりました。現代では、エチケットは消費者への情報提供とブランディングの両面で重要な役割を果たしています。
※ AOC制度とは、農産物や食品の原産地を保証する制度です。特定の地域で伝統的な方法で生産されたことを証明します。



ワイン生産国は大きくわけて、オールドワールド(旧世界)とニューワールド(新世界)があります。



オールドワールドは、紀元前にまで遡るヨーロッパ諸国が中心でフランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ドイツなどが代表的。それ以外の生産国をニューワールドと呼びます。
エチケットとラベルの違い


ワインの「ラベル」と「エチケット」は同じ意味で、英語では「ラベル(label)」、フランス語では「エチケット(étiquette)」と呼ばれます。
「エチケット」の語源は、宮廷での礼儀作法を書いた札に由来し、ワインのラベルにもこの名前が使われるようになりました。昔はワイン輸送時に荷札(エチケット)を貼って内容を確認する習慣があり、そこからワインのラベルを指す言葉として定着しました。
日本では「ラベル」という表現が一般的ですが、ワインにおいては「エチケット」が正しい表現です。
エチケットに記載される情報は、法的要件や規制にもとづいて提供されます。主に銘柄名やヴィンテージ、生産者名や生産地などの基本的な情報の表示が役割です。エチケットはデザインや色使いによって、消費者の目を引き、ブランドイメージを伝える役割もあります。
エチケットが果たす役割
エチケットはワインの顔として重要な役割を果たします。品質や特徴を消費者に伝える情報源となり、生産地や品種、ヴィンテージなどの基本情報をひと目で確認できるのが特徴です。デザインや色使いで生産者の個性や伝統を表現し、差別化を図るとともに、消費者の購買意欲を刺激する効果もあります。
アルコール度数や原産地呼称などの必須情報を記載すると、販売に必要な法的要件をクリアします。エチケットに記載されるその他の主な情報は、以下のとおりです。
- 保存方法や飲み頃
- 生産者の歴史
- ワインの格付け
- 認証マークや受賞歴
エチケットはワインの魅力を伝え、消費者の理解を深めるために重要です。
ワインのエチケットに記載されている情報


ワインのエチケットには、主に以下の情報が多く記載されています。
- 原産地
- ブドウ品種
- 生産者の情報
- ヴィンテージ
- アルコール度数
- 味わいの指標
原産地
ワインの原産地は、品質や特徴を理解するうえで重要です。ワインの味わいや価値を判断する手がかりになります。原産地は、ワインが作られた国や地域を指します。フランスやイタリア、スペインなどが伝統的なワイン生産国です。
アメリカやオーストラリアなどの新世界のワイン生産国もあり、世界中でワインが作られています。原産地呼称は、特定の地域で生産されたワインの品質や特徴を保証する制度です。フランスには、AOC(アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレ)があります。
イタリアのDOCG(デノミナツィオーネ・ディ・オリジネ・コントロッラータ・エ・ガランティータ)も有名です。テロワールは、ワインの個性を決定づける土壌や気候、地形などの環境要因を指します。同じブドウ品種でも、テロワールの違いによって全く異なる味わいのワインが生まれます。
原産地の歴史や伝統も、ワインの特徴を理解するうえで重要です。何世紀にもわたって受け継がれてきた醸造技術や、土地特有のブドウ品種が、ワインに独特の個性を与えます。エチケットに記載された原産地の情報により、ワインの特徴を理解できます。
ブドウ品種


ブドウ品種は、ワインの味わいや特徴を決める重要な要素です。エチケットに記載されている品種を知れば、ワインの個性を理解できます。主なワイン用品種は、以下のとおりです。
- 赤ワイン用品種
- カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、ピノ・ノワール、シラー/シラーズなどが使われます。
- 白ワイン用品種
- シャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、ゲヴュルツトラミネールなどが代表的です。
- ロゼワイン
- グルナッシュやサンジョヴェーゼ、ピノ・ノワールなどさまざまなブドウが使われます。
- スパークリングワイン
- シャルドネやピノ・ノワール、ピノ・ムニエなどが主要な品種です。
地域によって特有の品種もあります。スペインのテンプラニーリョやイタリアのネッビオーロ、アメリカのジンファンデルなどです。品種を覚えれば、ある程度ワインの味わいを予想できます。同じ品種でも生産地や醸造方法によって味わいが異なるため、実際に飲んで確かめるのがおすすめです。
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生産者の情報
ワインのエチケットには、生産者に関する情報が記載されています。生産者名やワイナリー名、醸造家名が含まれ、ワインの品質や特徴を知るうえで大切な手がかりです。生産者の情報からは、ワインの製造元や品質、生産者の歴史・伝統などがわかります。
エチケットには輸入業者名が記載されている場合もあり、海外のワインを購入する際に役立ちます。生産者のウェブサイト情報は、より詳しく知りたい場合に便利です。
ヴィンテージ


ヴィンテージは、ワインの収穫年を示す重要な情報です。ワインの品質や味わいに大きく影響するため、ワイン選びの際に注目するポイントの一つとなります。同じワインでも年によって味が異なる理由は、気候条件の違いです。良いヴィンテージは、ブドウの生育に適した天候に恵まれた年を指します。
ヴィンテージワインは、特定の年に収穫されたブドウだけを使用しています。ノンヴィンテージワインは複数年のブドウをブレンドして作られ、一定の品質を保ちやすい点が特徴です。熟成に適したヴィンテージを見わけるには、ワインの専門家による評価やヴィンテージチャートを参考にしましょう。
ヴィンテージチャートは、各年のワインの品質を点数で表しています。古いヴィンテージのワインは希少性が高く、価値が上がる場合があります。
アルコール度数
アルコール度数はワインの特徴の一つです。通常、アルコール度数は9~16%の範囲に収まり、ワインの味わいやボディ感に大きな影響を与えます。アルコール度数が高いワインは、より濃厚で力強い味わいを持つ傾向です。アルコール度数が低いワインは、フレッシュで軽やかな味わいが特徴です。
多くの国では、ワインのエチケットにアルコール度数の表示が法律で義務付けられています。一般的に0.5%単位で表示されるため、購入時に確認しましょう。フォーティファイドワインと呼ばれる酒精強化ワインは、通常のワインよりも高いアルコール度数(20%前後)があります。
アルコールフリーワインは、0.5%未満のアルコール度数が特徴です。
» 楽しみ方が変わる!ワインのアルコール度数が決まるポイントと味わい方



フォーティファイドワインとは、醸造過程でアルコール(酒精)を添加してアルコール度数を高めたワインのことです。



代表的なものにはスペインのシェリー、ポルトガルのポートワインやマデイラワイン、イタリアのマルサラワインなどが挙げられます。
味わいの指標
ワインの味わいを理解するための重要な指標も、エチケットに記載されています。主な味わいの指標は、以下のとおりです。
- 甘口・辛口
- ボディ
- タンニンの強さ
- 酸味の強さ
- フルーティさ
味わいの指標は、数値やグラフで表される場合が多く、数値が高いほど特徴が強いことを示します。おすすめの飲み頃温度や料理との相性の提案なども、ボトル裏のエチケットに記載されていることがあります。
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世界各国のワインのエチケットの特徴


世界各国のワインにおけるエチケットの特徴を解説します。
フランスワイン
フランスワインのエチケットは、他の国のワインと比べて独特です。AOC(原産地統制呼称)システムにもとづいて、ワインの品質と原産地を保証しています。フランスワインのエチケットには、以下の情報が記載されています。
- 生産地域の名称(ボルドーやブルゴーニュなど)
- シャトーやドメーヌの名前
- ヴィンテージ(収穫年)
- アルコール度数
- 容量(通常750ml)
通常、ブドウ品種は一部の地域を除いて記載されません。フランスワインがテロワール(土地の個性)を重視しているためです。品質区分(グラン・クリュやプルミエ・クリュなど)や特定の畑の名称が記載される場合もあります。
イタリアワイン


イタリアワインのエチケットに表示されている、DOCGやDOCなどは、ワインの品質を保証する指標です。イタリアの主要生産地域には、トスカーナ、ピエモンテやヴェネトなどがあります。代表的なブドウ品種は、赤ワインではサンジョヴェーゼやネッビオーロ、白ワインではトレッビアーノやガルガネガなどがあります。
有名ワインの名前も重要な情報です。キャンティ(トスカーナ地方の赤ワイン)や、バローロ(ピエモンテ地方の赤ワイン)などがあります。



DOCGやDOCは、フランスのAOCと同じく品質を保証するための原産地呼称制度。最も厳しいのはDOCGの基準です。



DOCGは、味や香りなどの官能検査に合格しなければなりません。
スペインワイン
スペインワインのエチケットには、品質保証制度や主要品種、産地、熟成分類など、多くの情報が記載されています。スペインワインの特徴的な表記は、以下のとおりです。
- DOやDOCaなどの品質保証制度
- テンプラニーリョやガルナッチャなどの主要品種
- リオハやリベラ・デル・ドゥエロなどの有名産地
- クリアンサやレセルバ、グラン・レセルバの熟成分類
赤ワインが中心ですが、白ワインやスパークリングワインも生産されています。シェリーやカバなど、スペイン特有のワインもあるため、エチケットの情報を参考に選んでみましょう。輸出用のワインには英語表記が併記されている場合も多いので、スペイン語がわからなくても理解できます。
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ワインのエチケットの読み方


ワインのエチケットの読み方について、以下2つを解説します。
- ボルドーのエチケット
- ブルゴーニュのエチケット
ボルドーのエチケット


ボルドーワインのエチケットに記載されている主な情報は、以下のとおりです。
- ブランドロゴ
→多くの場合、自社のシャトー(醸造所)の絵が描かれている。 - Chapelle de Potensac
→銘柄。Chapelle de Potensac(シャペル・ド・ポタンサック)。
※シャトーポタンサックのセカンドラベル。 - MEDOC
→所在地。フランスボルドーのメドック地区のワインとして記載。
※ボトル裏面に「APPELLATION MEDOC CONTOROLEE」の記載。
これはワイン法で定められた原産地呼称で、メドック地区産の高品質ワインである証明。 - 2014
→ヴィンテージ。ブドウの収穫年です。 - Delon
→生産者名。ワイン生産者はドゥロン。
※銘柄と生産者名が同じワインもある。
ボルドーのエチケットには、通常ブドウ品種は記載されません。所有者や醸造家の名前、ロゴ・シンボルマークなどの情報も、ワインの個性や特徴を知る手がかりとなります。



「APPELLATION (生産地) CONTOROLEE」はアペラシオンと呼ばれる原産地を保証する証明です。アペラシオンの記載は厳格です。
たとえば、ボルドーで生産されるワインの大半が赤ワイン。メドックやサンテミリオン、ポムロールといった有名なアペラシオンは赤ワインにしか認められていません。そのため、メドック地区で白ワインを造ったとしても、アペラシオン「ボルドー」(地方名)に格下げした記載となります。



エチケットにはその他にも、容量、アルコール度数、瓶の元詰め先などが記載されています。ボトル裏のエチケットも見てください。
瓶の元詰め先の表記は、「Mis en Bouteille (元詰め先名)」と記載されています。元詰め先は必ず記載されるもので、今回のワインではボトル裏面に「Mis en Bouteille a la propriete」=「所有者元詰め」と表記されています。
ブルゴーニュのエチケット


ブルゴーニュのエチケットを理解するには、以下の項目に注目してください。
- ブランドロゴ
→多くの場合、自社を象徴するロゴや絵が描かれている。 - Vin de Bourgogne
→産地名(村名や地区名など)。フランスブルゴーニュのワインとして記載。 - Bourgogne Chardonnay
→銘柄。ブルゴーニュでは、産地名やブドウ品種名が銘柄となる場合が多いです。 - Appellation Bourgogne Controlle
→原産地呼称(アペラシオン)。ブルゴーニュ産ワインであることを証明。 - 瓶の元詰め先名
→「Mis en bouteilles par」の後にそのワインを瓶詰めした業者の名前を記載(生産者で瓶詰め)。 - Masson Dubois
→ドメーヌ名(生産者名)。今回のワインのドメーヌは「マッソン・デュボア」。



容量、アルコール度数、ビンテージなどはボトル裏面や上部のエチケットに記載されていることが多いです。
ブルゴーニュワインの多くは、ピノ・ノワール(赤ワイン)とシャルドネ(白ワイン)の2つの主要品種から作られます。エチケットに記載されていなくても、赤ワインならピノ・ノワール、白ワインならシャルドネと考えて問題ありません。
「ヴィエイユ・ヴィーニュ」(古樹)という表記があれば、樹齢の高いブドウの木から作られた、凝縮感のある味わいのワインです。



旧世界のワインは伝統に基づいてエチケット記載も細かく決められています。対して、新世界のエチケットは自由度が高くわかりやすい表記が多いです。
ワインのエチケットを使ったワイン選びのポイント


エチケットを使ったワイン選びのポイントは、味わいの好みや料理に合わせる点です。
味わいの好みに合わせる
エチケットに記載されている甘口・辛口の表記を確認してください。甘いワインが好きな方は甘口を、すっきりとした味わいが好みの方は辛口を選びましょう。タンニンと酸味の強さも重要です。タンニンが強いと渋みを感じ、酸味が強いとさっぱりとした印象になります。
軽いボディのワインはさらっとした飲み心地で、重いボディのワインは濃厚な味わいです。オーク樽熟成の有無も味わいに影響します。樽熟成されたワインは、複雑で深みのある味わいが特徴です。アルコール度数やヴィンテージ、ブドウ品種、生産地域なども、好みのワインを見つける手がかりになります。
料理に合わせる
ワインと料理の適切な組み合わせを選べば、料理の味わいが引き立ち、ワインの魅力を最大限に引き出せます。基本的なルールは、以下のとおりです。
- 白ワイン:白身魚や鶏肉料理
- 赤ワイン:赤身肉や濃厚な料理
- ロゼワイン:幅広い料理
- スパークリングワイン:前菜やデザート
ほかにも、甘口ワインはスパイシーな料理や青かびチーズ、辛口ワインは魚介類や軽い肉料理にも合います。フルボディのワインは濃厚な肉料理やステーキ、ライトボディのワインは軽い前菜や魚料理と相性が良好です。自分の好みや料理の特徴に合わせてワインを選べば、より豊かな食事を楽しめます。
» 濃厚で力強い味わい!フルボディの魅力を知ってワインを楽しもう
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まとめ


エチケットにはワインの生産地や品種、生産者、ヴィンテージなど、重要な情報が詰まっています。知識を身に付けて、自分好みのワインを見つけてください。フランスの主要産地ごとのエチケットの読み方を覚えれば、より多くのワインを楽しめます。
エチケットの知識を活用すれば、レストランでも自信を持ってワインを注文できます。ワインの世界は奥深いため、焦らず楽しみながら知識を増やしていきましょう。
» ワインを楽しむなら知っておきたい!ワインの基礎知識を理解しよう