デキャンタとは?デキャンタージュの目的や効果・正しいやり方と注意点を解説!

ワインをデキャンタージュしている男性

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ワインを開けたとき、思ったより香りが閉じていたり、渋みや酸味が強すぎたりする場合があります。ワインの香りを開かせ、渋みや酸味を和らげ、まろやかな味わいにするのがデキャンタージュです。この記事では、デキャンタージュの目的や効果が高いワインの種類、正しいやり方と注意点を解説します。

記事を読めば、ワインの香りや味わいを引き出すデキャンタージュのコツがわかります。基本を理解し、ワインを最大限に味わいましょう。

» ワインを楽しむなら知っておきたい!ワインの基礎知識を理解しよう

嫁ちゃんソムリエ

ワインのプロが、初心者の人にもわかりやすく解説します。

目次

デキャンタとはワインを移し替える容器のこと

デキャンタ

デキャンタに関する基本情報を以下にまとめました。

  • デキャンタの歴史
  • 「デキャンタ」と「デカンタ」の表記の違い
  • デキャンタとカラフェの違い

デキャンタの歴史

デキャンタの歴史は古代エジプトにまでさかのぼります。ワイン文化とともに発展し、形や材質が変化してきました。16世紀のヴェネツィアでは、高級ガラス製のデキャンタが登場し、美しく注げるようになりました。17世紀にはイギリスでクリスタルガラス製が普及します。

18世紀にはワインの種類や飲み方に合わせた多様な形状が生まれます。19世紀には、より使いやすく洗練されたデザインが登場しました。20世紀後半にはワイン文化の広がりとともにデキャンタの使用が一般化し、身近なアイテムとなります。21世紀には機能性とデザイン性を兼ね備えた新しい形状が開発されました。

筆者

デキャンタはワインの味を引き出すだけでなく、食卓を彩る役割もあります。

「デキャンタ」と「デカンタ」の表記の違い

デキャンタ 英語 文字

「デキャンタ」と「デカンタ」は、どちらもワインを移し替える容器の名称です。正式な表記は「デキャンタ」ですが「デカンタ」も一般的に使われています。語源はそれぞれフランス語の「décanter」と英語の「decanter」に由来します。日本語では両方の表記が一般的です。

ワイン関連の専門書や公式文書では「デキャンタ」が多く使われます。日常会話やカジュアルな場面では「デカンタ」が一般的です。意味に違いはなく、どちらを使っても問題ありません。ソムリエやワイン愛好家では「デキャンタ」を好む人が多い一方、初心者や一般の人々には「デカンタ」が親しまれています。

デキャンタとカラフェの違い

デキャンタとカラフェ

デキャンタとカラフェは似ていますが、大きな違いがあります。デキャンタは主にワイン用で、注ぎ口が細く、装飾的な形状が特徴です。カラフェは注ぎ口が広く、シンプルな形が特徴で、さまざまな飲み物に使われます。デキャンタはワインの澱を取り除き、味わいを引き出す役割があります。

カラフェは機能を持たず、液体を注ぐための容器です。デキャンタは高価で高級感があるのに対し、カラフェは比較的安価で日常的に使われます。デキャンタはガラス製が一般的ですが、カラフェはさまざまな素材で作られます。ワインを楽しむ際は、適切な容器を選びましょう。

デキャンタージュの目的

デキャンタ 赤ワイン ワイングラス

デキャンタージュの目的を以下に挙げます。

  • ワインの澱を取り除く
  • ワインの香りを開かせる
  • ワインの味わいをまろやかにする
筆者

デキャンタージュすることを、「デキャンティング」と呼ぶ人もいます。フランス語と英語の違いだけで、どちらも同じ意味です。

ワインの澱を取り除く

ワインの澱を取り除くことは、デキャンタージュの目的の一つです。澱はワインの熟成過程で自然に生成される沈殿物で、主に赤ワインや長期熟成ワインに見られます。無害ですが、見た目や味に影響を与えることがあります。澱を取り除く手順は、以下のとおりです。

  1. ボトルを静かに立て、数時間置いて澱を底に沈ませる
  2. 光に透かして澱の位置を確認する
  3. 慎重にワインを注ぎ、ボトルの肩まで来たら止める

澱を混ぜないよう、ゆっくり注ぐのがポイントです。デキャンタージュにより、ワインが澄み、風味が際立ちます。

筆者

上記②の「澱を光に透かす」方法は、ロウソクかペンライトが効果的です。

嫁ちゃんソムリエ

ワインの下から光を照らすことで、澱の大きさや量を確認しやすくなります。

ワインの香りを開かせる

ワインの香りを引き出すことは、魅力を最大限に楽しむために重要です。ワインを空気に触れさせると、香りが引き立ちます。香りを開かせる方法を以下に紹介します。

  • デキャンタに注ぐ
  • グラスで回す
  • グラスに注いで置く

ワインが酸素と触れると香りが広がり、若いワインや濃厚な赤ワインでは特に効果的です。香りを開かせる時間は種類や年代によりますが、一般的に30分〜2時間が目安です。香りの変化を楽しむのも醍醐味になります。温度が上がりすぎると香りのバランスが崩れるため、適温を保つのが重要です。

空気に触れすぎると香りが飛んでしまうため、加減を調整しながら行いましょう。

ワインの味わいをまろやかにする

ワインの味わいをまろやかにするのは、デキャンタージュの重要な目的の一つです。空気に触れることで味が変化し、以下の効果が得られます。

  • タンニンの渋みが和らぐ
  • アルコールの刺激が穏やかになる
  • フルーティーな香りや味わいが引き立つ
  • 酸味がまろやかになる

ワインの味わいが全体的にまろやかになります。若いワインや渋みの強い赤ワインでは、デキャンタージュの効果が顕著です。

デキャンタージュが効果的なワイン

ソムリエ ワイン デキャンタージュ

デキャンタージュの効果が高いワインには、以下のタイプがあります。

  • 若いワイン
  • 渋みの強い赤ワイン
  • 澱の多い長期熟成ワイン

若いワイン

若いワインにデキャンタージュを行うと、香りと味わいが大きく変わるのが特徴です。フレッシュで果実味の強い若いワインは、デキャンタージュにより魅力が引き立ちます。若いワインの特徴は、以下のとおりです。

  • フレッシュで果実味が強い
  • タンニンが荒々しいことがある
  • 酸味が強く感じられる場合がある
  • 香りが閉じていることがある

若いワインにデキャンタージュを行うと、空気に触れて香りが開き、味わいが丸くなります。赤ワインでは効果が高く、デキャンタージュして30分〜2時間で大きく変化します。白ワインでも、香りが閉じていたり酸味が強すぎたりする場合は、短時間のデキャンタージュが効果的です。

ワインの個性や状態を見極めながら行うのが大切です。若いワインもデキャンタージュによっておいしさが引き立ちます。

渋みの強い赤ワイン

ワインのボトルからグラスに注ぐ

渋みの強い赤ワインは、タンニンが豊富で力強い味わいが特徴です。以下のブドウ品種の赤ワインがデキャンタージュに適しています。

  • カベルネ・ソーヴィニヨン
  • シラーズ
  • テンプラニーリョ

上記のブドウ品種で造られたワインには、若いヴィンテージや長期のオーク樽熟成を経たものも多くあります。濃厚な果実味と複雑な風味が特徴です。デキャンタージュにより香りが開き、渋みが和らぐことで滑らかで飲みやすくなります。最適な効果を得るために、飲む1〜2時間前にデキャンタージュを始めましょう。

筆者

上記のブドウ品種で造られたワインでも、長期熟成に向かないタイプもあります。

嫁ちゃんソムリエ

長期熟成に向くタイプかは、栓がコルクかどうかで判断できます。

澱の多い長期熟成ワイン

澱の多い長期熟成ワインは、デキャンタージュが効果的です。長期熟成されたワインは瓶内で澱が沈殿しやすく、澱を取り除くことで味わいが向上します。澱は主にタンニンや色素、酒石酸から形成され、ワインの味や香りに悪影響を与える恐れがあります。デキャンタージュで丁寧に取り除きましょう。

デキャンタージュの対象となるワインには、10年以上熟成した赤ワインや長期熟成した白ワインが含まれます。デキャンタージュの前に、光を当てて瓶の底に澱がたまっていないか確認しましょう。慎重に注ぐと効果的に澱を取り除けます。澱が多い場合はフィルターを使う場合もあります。

デキャンタージュ後は、すぐに飲み進めるのが理想的です。澱を取り除いた後のワインの最良の状態を楽しみましょう。

デキャンタージュを避けた方が良いワイン

ワイン ボトル 

デキャンタージュを避けるべきワインは、以下のとおりです。

  • 繊細な香りのワイン
  • スパークリングワイン

繊細な香りのワイン

繊細な香りのワインは、香りが飛びやすいためデキャンタージュを避けてください。以下のワインには注意が必要です。

  • 古いワイン
  • 熟成の進んだワイン
  • 軽めの赤ワイン
  • 白ワイン全般
  • アロマティックな品種

上記のワインはデリケートな香りが失われやすいため、デキャンタージュを避けた方が良いワインです。ブルゴーニュのピノ・ノワールやゲヴュルツトラミネールなどのアロマティックな品種には注意しましょう。デキャンタージュをしなくてもワインの魅力は十分に引き出せます。

適切な温度管理やグラス選びを工夫し、繊細な香りを楽しみましょう。

筆者

たとえ澱があっても、上記のような繊細なワインはデキャンタージュをおすすめしません。香りが飛んでしまうからです。

嫁ちゃんソムリエ

デキャンタージュしなくても、グラスの中で香りは開いていきます。

スパークリングワイン

スパークリングワインは、二次発酵によって炭酸ガスを含む発泡性のワインです。シャンパーニュ地方以外で造られ、主に白ワインから製造されますが、ロゼや赤もあります。甘口から辛口までバリエーションがあり、冷やして楽しむのが一般的です。開栓時の「ポン」という音が特徴的で、祝い事やパーティーで人気があります。

有名なものにプロセッコやカヴァがあります。シャンパーニュより比較的安価で、フルーティーで軽やかな味わいが多いのが特徴です。スパークリングワインは食前酒や食事全般に適しており、さまざまな場面で楽しめます。品質は炭酸の強さや泡の細かさで判断され、開封後は速やかに飲み切るのが理想的です。

フルートグラスで提供されるのが一般的で、特徴を知るとよりおいしく楽しめます。
» シャンパンとスパークリングワインの違いと楽しみ方をプロが解説!

デキャンタージュの正しいやり方と注意点

注意点 ノート

デキャンタージュを適切に行うために、以下のポイントを押さえましょう。

  • デキャンタージュの正しいやり方
  • ワインを注ぐ際の注意点

デキャンタージュの正しいやり方

デキャンタージュは、以下の手順で行えばワインの味わいを最大限に引き出せます。ワインに澱がある場合は、数日前からワインを立てて澱を沈めておきましょう。

  1. デキャンタを清潔に保つ
  2. ワインボトルのラベルを上に向けて持ち、ボトルの口を拭く
  3. デキャンタを傾けてワインを注ぐ
  4. 澱が見えたら注ぐのを止め、デキャンタを静かに置く
  5. ワインの表面に空気が触れるよう、広口のデキャンタを選ぶ
  6. 注ぐ際は壁面に沿わせてゆっくり行う
  7. 若いワインは勢いよく、古いワインは静かに注ぐ
  8. デキャンタ内のワインを軽く回して香りを開かせる

直射日光を避けて、室温に近い温度で行いましょう。手順を守れば、ワインの味わいを最大限に引き出せます。

筆者

ボトル内の澱を見えやすくするために、下から光をあてることがポイントです。光で照らさないと澱はほぼ見えません。

嫁ちゃんソムリエ

澱が見えたら注ぐのを止めます。余った澱のあるワインは、ガーゼやキッチンペーパーで濾して、料理に使うといいですよ。

よりわかりやすく、動画でもデキャンタージュのやり方を紹介します。

ワインを注ぐ際の注意点

ワインを注ぐ際は、ボトルの口を清潔に拭き、不純物の混入を防いでください。傾ける角度は徐々に大きくし、一気に傾けないよう注意が必要です。ボトルは肩部分を持ち、ラベルを上に向けると安定します。注ぐ際は、ゆっくり注ぎましょう。

デキャンタを使用する際は、壁面に沿わせて注ぐと空気との接触が増え、香りが開きやすくなります。澱が見えたら注ぐのを止めましょう。ボトルを急に動かさず、周囲に気を配り、テーブルを汚さないようにします。適温を保つことも重要です。

赤ワインは室温よりやや低め、白ワインは冷蔵庫から出してすぐの温度が適しています。注ぐ量はグラスの1/3程度が適量です。ワインの魅力をより引き出し、豊かな味わいを楽しめます。

デキャンタージュの時間と持ち時間

砂時計 掛け時計

デキャンタージュを行う際の適切な時間について、以下にまとめました。

  • 最適なデキャンタージュの時間
  • デキャンタージュ後のワインの持ち時間

最適なデキャンタージュの時間

デキャンタージュ後に最もワインがおいしくなる時間は、ワインの種類や熟成度によって異なります。一般的な目安は、以下のとおりです。

  • 若いワイン:30分〜1時間
  • 5〜10年熟成のワイン:1〜2時間
  • 15年以上熟成のワイン:2〜3時間
  • タンニンの強いワイン:1〜2時間
  • フルボディの赤ワイン:1〜2時間
  • ミディアムボディの赤ワイン:30分〜1時間
  • 白ワイン:15〜30分

時間は目安で、ワインの個性や環境によって変わります。最適なタイミングを見極めるには、時間をおきながら試飲し、香りや味の変化を確認しましょう。

デキャンタージュ後のワインの持ち時間

デキャンタージュ後のワインの持ち時間は、種類や年代によって異なりますが、一般的に2〜3時間です。若いワインは4〜6時間持つ場合もありますが、古いワインは1〜2時間で飲み切るのが理想的です。以下のポイントに注意し、デキャンタージュ後のワインを楽しみましょう。

  • 適切な時間を見極める
  • 香りや味わいの変化を観察する
  • 長時間の放置は避ける
  • 適切に保存する

ワインは室温や酸素との接触で変化し、長時間放置すると酸化が進み風味が劣化します。残ったワインは真空ポンプで保存すると持ちが良くなり、冷蔵庫に入れれば翌日まで楽しめる場合もあります。

デキャンタなしでエアレーションする方法

ワインの香りを楽しむ男性

デキャンタを使わずにエアレーションする方法は、以下のとおりです。

  • グラスでワインを回す
  • ポワラーを使う

グラスでワインを回す

グラスでワインを回すと、香りを引き出しやすくなります。赤ワインは大きく、白ワインは小さく回すのがポイントです。グラスの脚を持ち、ゆっくり円を描くように10〜20秒回しましょう。ワインが縁まで上がる程度の勢いで回すと効果的です。若いワインや渋みの強いワインに有効です。

空気と触れる面積が増え、香りが広がります。繊細な香りのワインには控えめに行いましょう。回した後は少し静止させてから飲むと、香りをより楽しめます。グラスの脚をしっかり持ち、ワインの種類に応じて回し方を調整すると効果的です。スパークリングワインには向かないため注意してください。

ポワラーを使う

ポワラーは、ワインを注ぐ際に使用する小さな道具です。ワインを細く長く注げるため、空気に触れる面積が増え、香りや味わいが引き立ちます。赤ワインはもちろん、白ワインにも使えます。ボトルの口に差し込んで注ぐだけの簡単な操作でエアレーションが可能です。

レストランでも使われ、軽量で持ち運びやすく、手頃な価格で購入できます。デキャンタほどの効果はないものの、手軽にワインの風味を高められる便利なアイテムです。ワインをより楽しむために、ポワラーを活用しましょう。

まとめ

デキャンタ 赤ワイン

デキャンタージュは、ワインの味わいを引き出す重要な技術です。ワインの種類や状態に応じて適切な方法を選べば、より豊かな風味を楽しめます。若いワインや渋みの強い赤ワイン、長期熟成ワインには効果的です。デキャンタを使わなくても、グラスで回したりポワラーを使用したりすると、空気に触れさせる効果が得られます。

繊細な香りのワインやスパークリングワインには向かないため注意が必要です。適切な注ぎ方と時間管理を意識すれば、ワインの魅力を最大限に引き出せます。デキャンタージュの知識を活用し、ワインをより深く楽しみましょう。

ワインをデキャンタージュしている男性

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この記事を書いた人

日本ソムリエ協会認定のソムリエ夫婦です。
プロの感性を活かして、本当に美味しいワインをご紹介。
ただのレビューサイトではなく、ワインの基礎も分かりやすく学べます。
ワインを自分で選べるようになりたい人は当ブログをお役立てください!

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