ワインを自分で選んで楽しみたい人は多くいます。しかし、ワインの味わいには、アルコール度数の違いが影響することを知らない人がほとんどです。この記事では、ワインのアルコール度数について詳しく解説します。記事を読めば、ワインのアルコール度数が味わいや楽しみ方にどう影響するのかがわかります。
ワインのアルコール度数は、通常9~16%です。種類や製法によってアルコール度数は異なり、味わいや保存性に影響を与える要素です。

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ワインのプロが、初心者の人にもわかりやすく解説します。
ワインのアルコール度数


ワインのアルコール度数は種類によって異なります。平均的なワインのアルコール度数と赤ワインや白ワイン、スパークリングワインのアルコール度数の違いを解説します。
平均的なワインのアルコール度数
ワインのアルコール度数は、一般的に9~16%です。テーブルワインと呼ばれる日常的に楽しむワインの場合、平均的なアルコール度数は11~13%程度です。ノンアルコールワインのアルコール度数は、0.5%未満に抑えられています。お酒が苦手な人や、健康上の理由でアルコールを控えたい人におすすめです。
アルコール度数は国や地域によって、法律で規定されている場合もあります。EU圏では8.5~15%、アメリカでは7~24%の範囲が一般的です。ワインのアルコール度数には、幅広い選択肢があります。自分の好みや状況に合わせて、適切なアルコール度数のワインを選びましょう。
赤ワイン・白ワイン・スパークリングワインの度数の違い
赤ワインや白ワイン、スパークリングワインのアルコール度数には違いがあります。一般的に赤ワインは高く、白ワインが中程度です。スパークリングワインは低く、デザートワインが最も低い傾向にあります。ワインの種類別のアルコール度数は以下のとおりです。
ワインの種類 | アルコール度数 |
赤ワイン | 12.5~14.5%程度 |
白ワイン | 11.5~13.5%程度 |
スパークリングワイン | 9~12% |
デザートワイン | 7.5~11%程度 |
数値は平均的なものであり、例外もあります。一般的な傾向として、赤ワインが最も高く、デザートワインが最も低いと覚えておきましょう。
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酵母の働きで糖分がアルコールに変わります。一般的に、甘口ワインはブドウの糖分をすべてアルコールに変えず、一部残すことで甘さを出しています。



ただ、甘口ワインの中にも、酒精強化ワインと呼ばれるアルコールを添加したものもあります。
ワインのアルコール度数が決まるポイント


ワインのアルコール度数は、さまざまな条件によって決まります。アルコール度数が決まるポイントは以下のとおりです。
- ぶどう品種
- 産地や気候の条件
- 収穫時期と糖度
- 醸造プロセス
ぶどう品種
ぶどう品種によってアルコール度数や味わいが異なるため、好みに合わせて選びましょう。一般的に、赤ワインに使われるブドウは糖度が高く、アルコール度数も高くなる傾向があります。カベルネ・ソーヴィニヨンは、高アルコール度数で濃厚な味わいが特徴です。シャルドネは、中程度のアルコール度数で多様な風味を持ちます。
ピノ・ノワールは、低〜中程度のアルコール度数で繊細な味わいが楽しめます。メルローは、中程度のアルコール度数で滑らかな味わいです。ソーヴィニヨン・ブランは、低〜中程度のアルコール度数で爽やかな風味が特徴です。代表的なぶどう品種の特徴やアルコール度数がわかると、自分好みのワインを選べます。
ぶどう品種によってアルコール度数や味わいが異なるため、さまざまな種類を試しましょう。自分の好みに合ったぶどう品種を見つけると、ワインをより楽しめます。
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産地や気候の条件


温暖な気候では、糖度の高いぶどうが育ちやすく、高アルコール度数のワインになる傾向です。日照時間が長い地域では、ぶどうの糖度が上がりやすく、高アルコール度数のワインが生まれやすくなります。冷涼な気候では酸味の強いぶどうが育ちやすく、アルコール度数は低い傾向です。
標高の高い産地では、昼夜の温度差が大きく、複雑な風味と適度なアルコール度数のワインが生まれます。海洋性気候の産地では、穏やかな気候により中程度のアルコール度数のワインが多く生産される点が特徴です。



「海洋性気候」とは、海洋の影響を強く受ける気候のことで、温暖で湿度が高く、気温の変化が少ない気候です。



ワイン生産国で言うと、ニュージーランドが代表的ですね。
収穫時期と糖度
一般的に、収穫時期が遅くなるほどブドウの糖度が高くなり、アルコール度数の高いワインが生まれます。早期に収穫されたブドウは糖度が低く酸味が強く、アルコール度数が低くなる傾向です。晩期に収穫されたブドウは糖度が高く、アルコール度数の高いワインになる場合が多くあります。
収穫時期の決定には、高度な判断力が求められます。気候条件によって最適な収穫時期が変わるため、ワイン醸造家の専門技術が不可欠です。収穫時期を判断するポイントは以下のとおりです。
- ぶどうの熟度
- 糖度
- 酸味のバランス
- 天候予報
過熟な状態でブドウを収穫すると、糖度が高すぎてワインのバランスを崩す可能性があります。適切な収穫時期を見極めることが、品質の高いワインを造るための重要な要素です。
醸造プロセス
醸造過程では、発酵の管理が重要な役割を果たします。温度と時間の調整は、ワインの品質とアルコール度数に直接影響します。適切な温度管理により、酵母の活動を最適化し、望ましいアルコール度数を得ることが可能です。糖分の残留量も重要な要素です。発酵を早めに止めると糖分が残り、アルコール度数が低くなります。
発酵を長く続けると糖分が少なくなり、アルコール度数が高くなります。酵母の選択と使用量も、アルコールの生成に大きく影響を与える要素です。強力な酵母を使用すると、高いアルコール度数になる傾向があります。ワインの最終的な特性とアルコール度数を決める要因は以下のとおりです。簡単に解説もします。
- 酵母:酵母の種類は、アルコール発酵の効率や、生成される香りの成分に影響
- 発酵温度や期間:発酵温度や期間は、酵母の活動や、ワインの風味に影響
- マロラクティック発酵の実施の有無:リンゴ酸を乳酸に変換し、ワインの酸味をまろやかにする効果
- ブレンディング:ブレンドするワインの種類や割合は、ワインの品質に影響
- 熟成:熟成期間や熟成に使用する容器(樽など)は、ワインの風味やタンニンの変化に影響
- フィルタリングの程度:清澄(せいちょう)・ろ過の程度は、ワインの透明度や安定性に影響
- 瓶詰め:瓶詰め時の酸素接触や、使用する栓の種類も、ワインの味わいに影響



上記でアルコール度数に影響するものは、「酵母の種類」と「発酵」です。その他は、ワインの風味や品質に影響するものです。



マロラクティック発酵とブレンディングは、必ず行う決まりはありません。ワインの特性や造り手の判断によって決まります。
マロラクティック発酵は、フレッシュで酸味が魅力のワインや発泡性ワインには行いません。品質や特徴が失われるためです。主に赤ワインの生産過程で行われます。
ワイン選びの際にアルコール度数を考慮する理由


アルコール度数はワインにさまざまな影響を与えます。ワイン選びの際にアルコール度数を考慮する理由を4つ解説します。
- バランスと風味の構成に影響するから
- 保存と熟成に影響するから
- 個々の好みがあるから
- 健康に影響するから
バランスと風味の構成に影響するから
適切なアルコール度数は、ワインの複雑さと奥行きを引き出す重要な要素です。高いアルコール度数のワインは、一般的に濃厚でボディが強い傾向があります。口当たりが滑らかで、果実味が豊かに感じられます。アルコール度数が高すぎると、風味や要素を覆い隠してしまう可能性があるため、注意が必要です。
低いアルコール度数のワインは、軽やかでフルーティーな印象を与えます。爽やかさや酸味が際立ち、食事と合わせやすいのが特徴です。酸味やタンニン、果実味がアルコール度数と調和すると、複雑で魅力的な風味が生まれます。テロワール(土地の特性)や醸造技術も、アルコール度数と風味のバランスに影響を与えます。
保存と熟成に影響するから


高いアルコール度数のワインは、長期保存に最適です。アルコールが酸化を防ぐ働きがあるため、長期熟成に耐えられます。熟成過程でアルコールと酸が結合し、複雑な香りと風味が生まれます。低アルコールワインは、比較的早めに飲みましょう。アルコール度数が低いと酸化が進みやすいためです。
アルコール度数は、保存期間と熟成のポテンシャルに大きく影響します。ワインを長期保存したい場合は、アルコール度数の高いワインを選びましょう。すぐに飲みたい場合は、低アルコールのワインもおすすめです。
個々の好みがあるから
アルコール度数は、ワインの味わいや香りに影響を与える重要な要素です。個々の好みに合わせたワインを選ぶ際は、以下の点を考慮しましょう。
- アルコールへの耐性
- アルコール度数が高いワインを好む人もいれば、低めのワインを好む人もいます。
- 食事とのペアリング
- 料理の味わいを引き立てるアルコール度数のワインを選ぶことが重要です。
- 飲む場面や状況
- 気軽な会話を楽しむ場合は低めの度数、特別な日には高めの度数のワインが適しています。



低アルコールのワインを選ぶと、楽しみながら健康にも配慮できます。
健康に影響するから
ワインを健康的に楽しむためには、適量を守ることが大切です。ワインのアルコール度数を把握すると、カロリーや摂取量をコントロールでき、二日酔いのリスクも軽減できます。長期的な健康への影響を考慮するうえでも効果的です。



妊娠中や授乳中の女性は、摂取量を慎重に検討しましょう。
服用中の薬との相互作用にも注意が必要です。運転や作業能力、睡眠の質に影響を与える可能性があるため、飲む量や時間帯に気をつけてください。体重管理や心臓血管系への影響も考慮し、適量を守って楽しむことが大切です。
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アルコール度数がワインの味わいに与える影響


アルコール度数はワインの味わいに多くの影響を与えます。アルコール度数が高いワインの特徴と、低いワインの特徴について解説します。
アルコール度数が高いワインの特徴
アルコール度数が高いワインは、口に含んだ瞬間にアルコールの強さを感じられ、温かみのある口当たりが特徴です。濃厚で重厚な味わいは、フルボディと表現されます。フルーツの風味が凝縮されており、豊かな果実味を楽しめます。赤ワインはタンニンも豊富なため、渋みを強く感じられる点が特徴です。
アルコールの刺激とともに複雑な風味が広がります。熟成による味わいの変化を楽しめるのも、アルコール度数が高いワインの魅力です。飲み終わった後も、長い余韻が口の中に残ります。濃厚な味わいの料理と合わせると、より一層おいしく楽しめます。
アルコール度数が低いワインの特徴
アルコール度数が低いワインは、フルーティーで軽やかな味わいが特徴です。酸味が際立つ傾向があり、爽やかな印象を与えます。アルコールの刺激が少なく、ボディが軽めで繊細な香りや風味を感じられます。食事との相性が良く、幅広い料理に合わせやすい点がメリットです。
夏季や昼間の飲酒に適しているため、子育て中のリフレッシュとしてもおすすめできます。カロリーが比較的低い点も魅力です。アルコールに弱い人や健康志向の人に人気で、長時間飲み続けても疲れにくい傾向があります。リラックスしたいときや、軽く一杯楽しみたいときにおすすめです。
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アルコール度数の高低による飲み方の違い


アルコール度数の高低によって、ワインの楽しみ方が変わります。アルコール度数の高低による飲み方の違いを解説します。
アルコール度数が高いワインの飲み方
アルコール度数が高いワインは、濃厚で重厚な味わいが特徴です。アルコール度数が高いワインを楽しむためのポイントは、以下のとおりです。
- 少量ずつゆっくり飲む
- アルコール度数が高いワインは、一気に飲むと体に負担がかかるため、時間をかけて味わいましょう。
- 適度な温度で提供する
- 室温より少し低めの温度が、香りと味わいを最大限に引き出します。
- 水や食事と一緒に楽しむ
- アルコールの吸収を緩やかにできます。高タンパクな料理と好相性です。
- デキャンタージュを行う
- ワインを別の容器に移し替えると、香りが開き、アルコール臭さが和らぎます。
- 小ぶりのグラスを使用する
- 一度に飲む量を控えめにできます。
アルコール度数を確認し、飲酒後の運転は避けましょう。翌日の予定を考慮することも大切です。水や炭酸水で割ると、アルコール度数を下げつつ、ワインの風味を楽しめます。適度な休憩を取りながら飲みましょう。ゆっくりと時間をかけて楽しむと、高アルコールワインの魅力を存分に味わえます。
アルコール度数が低いワインの適切な飲み方
アルコール度数が低いワインは、軽やかな味わいと飲みやすさが特徴です。アルコール度数が低いワインを楽しむためのポイントは、以下のとおりです。
- 適温で飲む
- 小さめのグラスを選んで少量ずつ楽しむ
- チーズや軽い前菜と合わせる
- ゆっくりと時間をかけて飲む
軽めの白ワインは7〜10℃、軽めの赤ワインは13〜16℃程度で提供しましょう。アペリティフやデザートワインとしても楽しめるため、さまざまな場面で活用できます。開栓後は酸化しやすいので、早めに飲み切りましょう。
ワインのアルコール度数に関するよくある質問


ワインのアルコール度数に関するよくある質問と回答を以下にまとめました。
- ワインのラベルでアルコール度数を確認できる?
- アルコール度数はワインの価格に影響する?
ワインのラベルでアルコール度数を確認できる?
アルコール度数は、ワインのラベルで確認できます。多くの国で、法律により表示が義務付けられているためです。アルコール度数は、ボトルの前面か背面のラベルに記載されています。「Alcohol by Volume」や「ABV」といった表記で示されます。小数点以下1桁までの精度で表示される点が特徴です。
ラベルに記載がない場合は、輸入元や販売店に問い合わせると確認できます。オンラインショップを利用する場合は、商品詳細で確認が可能です。
アルコール度数はワインの価格に影響する?
アルコール度数は、ワインの価格に直接的な影響を与えません。価格は主にブドウの品質やブランドの評判、醸造技術、生産量、需要などの要因で決まるためです。高品質なワインは、醸造過程で自然とアルコール度数が高くなります。一部の高級ワインはアルコール度数が高い傾向にあります。
アルコール度数の高さは、価格に直結しません。高アルコール度数のワインは、醸造過程でより多くのブドウを使用するため、生産コストが高くなる場合があります。低アルコールワインが安価だとは限りません。消費者の好みやトレンドによっても価格が変動します。
ワインの価格を決める最も重要な要素は、アルコール度数ではなく、ワインの全体的なバランスや品質です。アルコール度数は、ワインの特性の1つに過ぎません。
まとめ


ワインのアルコール度数について、重要なポイントをまとめました。ワインの種類によって度数が異なり、9~16%の範囲に収まります。度数を決める要素は、ブドウの品種や産地、気候、収穫時期、醸造方法などです。アルコール度数はワインの風味や保存性、健康への影響に関係があります。
高めの度数のワインは濃厚で力強い味わいになりますが、低めの度数のワインは軽やかで繊細な味わいです。ワインを楽しむ際は、アルコール度数に応じて適切な飲み方や温度調整を意識しましょう。ラベルを確認すれば度数がわかるため、自分の好みや状況に合わせて選んでください。
アルコール度数は価格には影響しないので、味わいを重視して選びましょう。